No.005 篠田岬輝様【動物写真家と経営コンサルタントのパラレルワークで活躍】

世界を飛び回る動物写真家と、ビジネスコンサルタントの二足の草鞋を履く篠田さんは、当社の登録者として複数案件で高い実績を出されています。そのような篠田さんの学生時代や写真家を目指したきっかけ、さらには今後のビジョンを語っていただきました。

略歴)
1990年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、新卒でデロイトトーマツコンサルティング合同会社に入社。その後、動物写真家の道を目指して独立し、2017年よりプロ写真家としての活動を本格化。アフリカや南極を中心に世界各国で野生動物を撮影中。
写真集 「サバンナに生きる! ライオン家族の物語」(玄光社)が発売中。

インデックス

1. 自然で遊ぶことが大好きだった少年時代

世田谷区二子玉川で生まれた篠田さんは、アウトドア好きの4人家族で育ちました。特にカヌー好きのお父様がアウトドア活動に積極的で、篠田さんも川に入ってザリガニやオタマジャクシを採っては育てていました。

「父は今でもバイクのツーリングが好きで、私が小さい頃からアクティブな人でした。私が少年時代、父はカヌーが大好きで、那珂川や大井川などいろいろな川に連れて行ってもらいました。また動物園や水族館、牧場などにもよく連れて行ってもらい、生き物たちと触れ合う体験の楽しさを教えてくれました。」

篠田さんはお父様が経営されていた個別指導塾に通っていた時期もあったようで、そこでは父子ではなく、講師-生徒といった関係のなかで厳しい指導もあったようでした。

2. メディアに興味を持った学生時代

篠田さんは中学校まで地元の公立校に通った後、慶應義塾高等学校に進学しました。高校時代には木村拓哉のドラマを見て、検事を目指した時期もあったようですが、お父様の一眼レフカメラなどを使い 趣味で撮影はしていたようです。
その後、慶應義塾大学 法学部に進みました。

「大学時代は慶應大のメディアコミュニケーション研究所に入りました。特にテレビに強い関心があり、テレビ朝日の放送作家養成所にも通っていた時期があります。また、大学1年の頃に自分で一眼レフカメラをはじめて購入して、米国横断や欧州旅行などで撮影していました。」

まだ動物写真家もビジネスコンサルタントも志望していなかった篠田少年は、いつ夢を持ったのでしょうか。

「大学の先輩が就活で経営コンサルティングファームを受けていたことを聞いてから、その業界に興味を持つようになりました。そして、デロイトトーマツコンサルティング合同会社(以下、デロイト社)のインターンシップに行き、非常に面白い仕事だと感じ、さらにTMT(Technology・Media・Telecom)領域があることを知り、テレビなどのメディアを外側から見たいと思って、そのままデロイト社に就職しました。」

デロイト社に入社後は、希望通りTMTのチーム部に所属できました。そこでは事業戦略や新規事業立案、事業改革など様々な案件を経験しました。あるときTMTチームと、マーケティング領域を行うCRMのチームが合同でテレビ局関係のプロジェクトを立ち上げていることを知り、上司に相談してメンバーに入ることができました。その案件が非常に面白く、CRMチームの上司にも恵まれ、とても印象に残っているそうです。

3. プロ写真家を目指す契機になった3週間のアフリカ旅行

ビジネスコンサルタントは案件に入っているとハードワークを求められますが、案件が終わると、次の案件までの間は休暇を取得して、時には数週間ほど休める時もあります。篠田さんも案件の狭間で3週間の休暇を取り、アフリカに向かいました。
この旅行が本格的に動物写真家を目指すきっかけになったようです。

「もともと動物を見るのが好きで、『ナショジオキッズ』の書籍や、『どうぶつ奇想天外!』と言った番組を幼少時代からよく観ていました。そして、実際にアフリカに行って野生動物を直接見たら、当然ですが(笑)、動物園とは全く異なる世界があり、衝撃を受けて非常に興奮したことを鮮明に覚えています。野生動物を初めて生で見たのは学生時代のオーストラリア旅行時に、オットセイ同士の喧嘩を見て興奮しましたが、アフリカ旅行ではさらに興奮しました。チーターの狩りを見た時、子供のガゼルの首を絞めて生きたまま腹部を食べ始めて、ガゼルがピーピーと鳴いている。チーターも狩りの直後なので体力をかなり消耗しており、息遣いの荒さが近くで聞こえる。このようなシーンを間近で見ると、不思議とグロテスクさは感じず、明日を生きるために全力を尽くす動物たちの美しさと、自然環境の中で生きることに対する自分の非力さを感じました。このアフリカ旅行で、人生観が大きく変わり、動物写真家として生きていきたいという思いに至りました。」

4. プロ写真家とコンサルタントの二足の草鞋での苦労

しかし、経営コンサルタントの仕事が次第に忙しくなってくると、以前のように2-3週間の休暇を取るのが難しくなってきました。そこで将来を考えて、27歳でデロイト社を退職し、フリーランスのビジネスコンサルタントと写真家の二足の草鞋を履く決意をされました。

「独立当初は貯金もありましたが、写真家として必要な機材をまとめて購入していくと、数百万円単位で遣うので貯金も減り、不安も募っていきました。しかし、そうこうしているうちに、デロイト時代の同僚からコンサル案件を紹介してもらい、また写真家としてはブライダルフォトの仕事をして、稼げるようになってきました。独立して最初の年は、2-3か月しか海外での取材が出来ず、悔しい思いをしました。もっと腰を据えて撮影をしたいと思い、独立二年以降はコンサル案件に入る時期と、撮影時期を完全に切り分けて、メリハリをつけることにしました。」

当社がご紹介した複数の案件では、クライアントからの評価が毎回高い篠田さんですが、プロの写真家として活動しながら、フリーのビジネスコンサルとして成果を出すために、何を工夫しているかを尋ねてみました。

「写真家とコンサルの時では、頭の切り替えを相互に意識しています。
また、コンサルとしては、会社員時代よりも価値提供に対して、より強く意識するようになりました。フリーランスになると、現案件で十分なバリューやパフォーマンスを出せてないと、次は絶対に声掛けされない。これは会社員時代にはそこまで切実に感じなかったことです。参画当初は一定の成果や信頼を得られるまでは、稼働率を一旦度外視して、一気呵成で成果を出すように強く心がけています。」

次に少し違う角度の質問をしてみました。
動物写真家として、世界各地で様々な外国人と出会う篠田さんから見て、日本人固有の印象を伺ってみました。

「日本人は自己紹介する際に、自分の所属や年齢などの属性情報をまず伝えようとします。しかし、外国人の写真家は、これまでの実績を伝える人が多いと感じます。
また、外国人は日本に対して、自動車やエレクトロニクスなどの技術立国のイメージを持っていることが多いですが、実際使っている製品を聞くと、サムスンやLGといった海外製品であることが多いです。」

5. これからの夢やビジョン

フリーランスの経営コンサルタントと写真家を兼務する篠田さんに、将来の夢を聞いてみた。

「将来的にはもっと長い期間を海外取材に費やし、動物たちと過ごす時間を増やしていきたいと考えています。
そして、自分の写真を見ていただき、そこに行ってみたいと思わせるような写真家になりたいと考えています。自分もナショナルジオグラフィックなどの写真がきっかけとなったので、自分の写真も誰かのきっかけになればと思っています。またウェブなどで情報があふれていたり、VRなどテクノロジーも進化していますが、それと比例してリアルな体験の重要性も高くなると考えるからです。」

「また、昨今はカメラ機器の技術が進化して、写真家におけるプロとハイアマチュアにおいて、写真1枚で見て技術面などの差がなくなってきています。その中で、プロとしての付加価値を出すためには、某かの一貫したテーマを持って、メッセージや社会的テーマを問うことが重要になってきていると思います。特に欧米の写真家は、学者やコンサーベイショニスト出身の人が多いので、その写真に学術的な意味合いやメッセージ性が非常に強いのです。
そのような中で、私は人間と動物の【境界線】をテーマに撮影しています。例えば、日本だと畑を荒らすイノシシを害獣と言ったりしますが、これは人間中心の言い方で、そこには容易には解決できないお互いの事情があります。そこを撮影し、人間と動物が共生できるような姿はないのかということをテーマに、撮影をしていきたいと思っています。」

動物写真家としても100%全力で取り組み、さらにフリーのビジネスコンサルタントとしても100%全力で取り組む、まさに200%全開で人生を生きている篠田さんのバイタリティと旺盛な好奇心を痛感するインタビューとなりました。
現在、篠田さんは二足の草鞋を履くライフスタイルのなかで、フリーのコンサルとして稼働しやすい期間やタイミング、案件内容などを柔軟にご紹介できていることが、当社を活用し続けている理由とのことでした。これからの篠田さんのさらなる活躍に我々もより一層貢献していきます。

インタビュー所感)
篠田さんとの付き合いはかれこれ4年以上は経ちますが、撮影の話を伺うたびに、野生に生きる動物の逞しさや美しさ、そして生物として人間単体の弱さを感じます。
一方、言葉を発明して文明化してきた人間がいつしか食物連鎖の頂点に君臨しつつも、その他の生物を排除し滅ぼしてきた過去を顧みると、本当のSDGsや持続可能な世界とは何かを考えてしまいます。篠田さんの話から、海外では学者やコンサーベイショニスト出身者が写真家になるようですが、この領域での人材の流動化は、地球がもっと平和で豊かになっていくことに貢献するのだろうと感じます。
いろいろと考えさせられたインタビューではあったが、いつか篠田さんがガイドする海外ツアーに行ってみたいと思っています。

(取材:金居宗久)